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このコーナーではスチュワーデス物語の名場面を脚本形式で再現します。 |
千秋と村沢のキスに激怒する真理子
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16
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羽田・東京国際空港近く・夜 |
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特訓を終え帰り道の村沢教官、松本千秋 |
松本千秋
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「教官、もうすぐクリスマスですね」 |
村沢教官
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「そうだなあ。それがどうした」 |
松本千秋
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「クリスマスが過ぎたら今年ももう終わり、もし私が次々にテストにパスできたら来年の3月訓練所を卒業してしまうのですね」 |
村沢教官
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「そうだ。お前もやっと一人前のスチュワーデスになって大空へ飛べるんだよ」 |
松本千秋
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「でも。そのとき、教官は私と別れて、そして真理子さんと結婚なさるんでしょ」 |
村沢教官
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「松本、それは俺達の約束だ。仕方ないだろ」 |
松本千秋
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「私が教官に会えるのは12月から3月までたった100日、100日しかない。それなのに私、どう教官を好きになっていいのか全然わかんないんです。教官、どうしたらいいんですか?」 |
村沢教官
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「松本、100日って長い時間だぞ」 |
松本千秋
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「いいえ、あっと言う間に過ぎます」 |
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と村沢の肩をゆさぶる千秋 |
松本千秋
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「でもあたし、何もできないなんて」 |
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持っていたバッグを落とす千秋 |
松本千秋
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「教官と手をつないで歩いた、腕をくんで歩いた、一緒に歌った、ただそれだけで終わるんですか?あたし、生まれて初めて人を好きになったんです。それなのに何もできないで別れるなんていやです。わたしめいっぱい教官を愛したい」 |
村沢教官
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「松本」 |
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千秋のおでこにキスをする村沢
泣き出し村沢に抱きつく千秋 |
松本千秋
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「教官、ありがとう、ありがとう、ありがとう」 |
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新藤真理子が現れる |
新藤真理子
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「2人とも何をしてるの?」 |
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あわてて離れる村沢、千秋 |
新藤真理子
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「浩には私という婚約者がいるのよ。それを知っていながら浩とキスして抱き合うなんてずうずうしいこね。許せないわ」 |
村沢教官
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「キスしたのは俺だ。松本に罪はない。松本、寮に帰って食事サービスの勉強をしろ」 |
松本千秋
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「はい」 |
村沢教官
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「さぁ」 |
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その場から走り去る千秋 |
新藤真理子
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「あのこをかばって逃がしたのね」 |
村沢教官
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「何ととでも言ってくれ」 |
新藤真理子
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「浩、あたしたちは結婚してフランスで暮らす約束よ。明日辞表を出して。スチュワーデスの教官辞めてもらいたいわ」 |
村沢教官
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「何度言ったらわかるんだ。俺が担当している478期生の訓練はあと3ヶ月しか無いんだよ」 |
新藤真理子
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「それがどうしたのよ」 |
村沢教官
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「これからの33ヶ月は訓練生がスチュワーデスに合格できるかどうかの大事な3ヶ月だ。俺も訓練生も死にもの狂いになってラストスパートをかける。その大事な時期に訓練生を放ったらかして教官を辞められるか」 |
新藤真理子
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「辞めてよ。3ヶ月なんかとても待てないわ」 |
村沢教官
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「どうしてだ。3ヶ月の訓練さえ終わったら、俺は君とすぐ結婚する。航空会社も辞めて君とフランスで暮らすよ」 |
新藤真理子
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「待てないって言ったら絶対に待てないの」 |
村沢教官
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「なぜ待てないんだ」 |
新藤真理子
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「松本千秋ってこが怖いのよ。あのこ3ヶ月の間にきっとあなたを自分のものにするわ」 |
村沢教官
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「馬鹿馬鹿しい、君の思い過ごしだよ」 |
新藤真理子
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「ごまかさないで。今夜だってあなたあのこに負けて押し仕切られたじゃないの」 |
村沢教官
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「松本、松本って目の敵にするのはおかしいよ。あいつはまだ子供だ」 |
新藤真理子
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「子供ほど恐ろしいものはないわ。無邪気に何でもやるのは、恥知らずでずうずうしいってことよ。うぶで内気な振りして相手に油断させるしすきをみれば体当たりでぶつかってくる。今夜だってそうよ」 |
村沢教官
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「しかし、俺が結婚するのは君だ」 |
新藤真理子
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「松本千秋はチビな野良犬よ。人懐っこく近寄ってくるもんだからあなたはついかわいくなって抱きしめてやるの。そのうち自分のマンションに連れ込んで大事に飼ってやるんじゃないの。危なくってあのこをあなたのそばにおいとけないわよ」 |
村沢教官
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「俺は君と結婚する。信用しろ」 |
新藤真理子
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「信じられないわ。さっききからあなたをずっと見てたけど間違いない、あなたあのこを愛してるわ」 |
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と言い捨てて立ち去る |
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(2005/12/28改)
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