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このコーナーではスチュワーデス物語の名場面を脚本形式で再現します. |
空中飯盛り女
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22
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松本千秋の家
壁の時計は深夜0時22分を指している
テーブルでは、千秋の義父・松本清治が酒のグラスを持ったまま黙りこくっている
千秋の母・弓子もまた、酒のボトルを持ったまま黙りこくっている
玄関のドアを開ける音に気付き、席を立つ弓子 席に座ったままグラスの酒を飲む清治 |
松本弓子
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「千秋」
と千秋に声をかけるが、返事をせず、むっとした表情でいる千秋
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松本清治
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「12時過ぎまで電話もよこさないで、どこで何をしていたんだ?」
と怒鳴りだす |
松本清治
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「うちへ帰ってきて、ただいまも言えんのか?」
と更に声を荒げテーブルを叩く |
松本千秋
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「ただいま」
と無表情にこたえる千秋 |
松本弓子
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「晩御飯は?何か食べる?」 |
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声を出さずに首を横に振り、テーブルに手をつく千秋 |
松本弓子
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「そいじゃあ、お風呂に入ってもう休みなさい。疲れたでしょ?」 |
松本千秋
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「お母さん。スチュワーデスの試験めちゃくちゃ、あたし、もうだめ。諦めた」 |
松本清治
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「諦めた?お前スチュワーデスになることが長年の夢だったんじゃないのか?それをたった一日でダウンして諦めるとは情けない奴だ。俺はな、車のセールスやっているがな。 客に断られてもねばりにねばって車売りつけるぞ!少しは俺の根性見習ったらどうだ」
とグラスの酒を飲み干す清治 |
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酒のボトルを千秋の前に乱暴に置く清治 |
松本清治
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「おい」
と空のグラスを千秋の眼前に差し出す |
松本清治
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「注げ」
と語調を荒げる |
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無言のままそっぽを向く千秋 |
松本清治
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「お前、父親に酒も注げんのか?」
とグラスをテーブル上に乱暴に置く |
松本弓子
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「はい、あなた、はい」
と千秋の代わりに酒を注ごうとボトルを手にするが 、すぐに清治にボトルをひったくられてしまう |
松本清治
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「あーや、俺が注ぐ」 |
松本清治
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「まったく意固地で強情なところは死んだ父親譲りだ」 |
松本千秋
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「父親譲りってどういうことですか?」
とようやく清治の方に振り返る千秋 |
松本千秋
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「パイロットだったお前の父親はな、ずいぶん頑固で人付き合いが悪かったそうじゃないか。 お前が俺に懐かないのもその父親の血を引いているせいだ」 |
松本千秋
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「ち、違います。死んだお父さんのせいじゃ」 |
松本清治
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「じゃぁ、何なんだ?言ってみ!ろえっ」 |
松本千秋
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「怖いんです。あなたが」
と清治をにらみつける |
松本清治
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「あなた?5年間養ってもらって、なんていい草だ!もういっぺん言ってみろ!お前は」
と荒れ狂い、千秋にとびかかろうとする |
松本弓子
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「やめてください。やめて」
とを静止しようとする |
松本清治
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「だいだいお前のような可愛げのない女はな、客商売のスチュワーデスになれるわけないんだ。さっさと諦めちまえ」 |
松本千秋
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「あたし、諦めない。やるわ」 |
松本清治
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「何?」 |
松本千秋
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「スチュワーデスになれるかなれないか、死に物狂いでやってみるから」
と階段を駆け上がる千秋 |
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(2011/03/06)
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