着陸シーンを精査すると，滑走路の端に「32R」と白字で表示されていることが判ります．
この「32R」は滑走路番号の一部です．

滑走路番号は，滑走路の磁北(36とする)からの方位角(時計回り，度単位)を1/10し，小数点以下を四捨五入した数字で識別されます．すなわち，前述の「32」は方位角が320度であることを意味します．

同一滑走路で逆方向に離着陸する場合，方位角は180度ずれますから，「32」と表示のある滑走路の反対側の端には「14」と表示されていることになり，一本の滑走路は「32/14」のように2つの方位角を併記して命名されます．

次に，数字(32)のあとの「R」は，Right(右側)を意味します．複数の滑走路が平行に設置されている場合に左右を区別するために，航空機の進行方向に向かって右側(R)か左側(L)かを表しています．

問題の着陸シーンは，滑走路の端に「32R」と表示されていたことから，少なくとも「14L/32R」， 「14R/32L」の2本の滑走路が存在することを示唆します．

全国空港ウォッチングガイド 増補改訂版 (イカロス・ムック)

パリ・シャルル・ド・ゴール空港に存在する滑走路を以下に挙げました．

08L/26R
08R/26L
09L/27R
09R/27L

以上の4本です．つまり，「32R」と表示された滑走路はド・ゴール空港には存在しません．滑走路は数年間にわたり風向を調査し，最も多い風向に沿って作られます．ド・ゴール空港は1974年の開港ですから，「スチュワーデス物語」が放映された1983年までの10年弱の間に滑走路方向を変更したとも考えにくいです．

最も自然な解釈は，別の空港での着陸映像を用いたというものです．
まず，日本国内で撮影されたと仮定すると「14L/32R」滑走路を有する空港は，大阪国際空港(通称：伊丹空港，IATAコード:ITM， ICAOコード:RJOO)のみです．

海外を含めると1983年の時点で「14L/32R」滑走路を有する空港として，シカゴ・オヘア国際空港(IATAコード:ORD，ICAOコード:KORD)が挙げられます．なお，マレーシア・クアラルンプール空港も同滑走路番号を保有する空港ですが開港が1983年以降ですので該当しません．

また，着陸シーンで使用された機体の登録記号(機体レジ)はJA8112と読み取れ，機種が，国際線に就航可能なBOEING747-146と判明します．大阪国際空港は国際空港ですので，日本航空が 1983年以前に日本-シカゴ線を就航していたかどうかで選択肢を減らすことが可能です．(2011/04/20修正)